マクロ経済指標活用の考え方
なぜ経済指標はウオッチする必要があるのか
経済指標を活用するのは面倒ですし、使いどころも
少し小難しいところはあります。
しかし、ヘッジファンド(クオンツ系)がやっていて、
一般的な個人投資家がやらない分析は、こういう分析ではないでしょうか。
経済指標を分析する手法を取り入れた個人投資家は、
それだけ機関投資家の立ち位置に近づけることになりますし、
完全に近づききれないとしても、ほかの個人投資家よりは着実に
アドバンテージを得ることになるでしょう。
経済指標はどう活用するのか
基本的な活用目標は
(1)今の相場が上昇相場なのか下降相場なのか、という判断に役立てる
(2)経済指標と実数値に大きな乖離が生じる時期を待って、反転する動きを狙う
となります。
基本的には、株価指数と経済指標のグラフを重ね書きしてみて、見比べることが作業内容です。
どんな経済指標が株価指数と連動性が高いのか、判断するのには、
回帰分析で相関係数を求めるのが基本です。
回帰分析の詳細はここで説明しませんが、「Excel 回帰分析」でググれば解説記事は
ネットにありますので各自、お調べください。どうしてもわからないという場合は、
コメントいただければ、何か実例の解説を考えるかもしれません。
目的変数をTOPIXなどの株価指数、説明変数を各種経済指標とし、
各指標の相関係数を算出し、相関係数の高いものを選んでいく、
というのが基本的な考え方です。
活用の注意点は
注意点としては、大きくは2つあります。
「過剰最適化」と「先行性」です。
まず過剰最適化について。
経済指標が株価指数と、これから未来にわたって相関し続けていくのか、
見極めるのには慎重さが必要です。
相関係数を求めるには、過去のデータを使うわけですが、
月次のデータで10-20年以上のデータを用意しても、
データ数にして、数百点程度にすぎません。
日次チャートでいえば1年分にも満たない量のデータで相関のあるなしを
判定しなければならない、ということになります。
システムトレードを研究したことがある人は、テクニカル指標
(ボリンジャーバンド、RSIなど)のパラメータを最適化して
トレードタイミングを決めるのに、数年分の日次データを使っても、
フォワードテストするとうまくいかない経験をよくしたと思います。
このようないわゆる「過剰最適化」の失敗は
経済指標の活用においても念頭に置く必要があります。
たとえば高度成長期には株価と相関していたデータは、先進国が
低成長時代に入っている現代だと相関の性質が変わるかもしれません。
とはいえ、チャートパターンに法則性を期待するのに比べれば、
経済指標の性質の変化は、緩慢なものであるはずで、
2019年まで通用していた相関が
2020年に突然ダメになるようなことは考えづらいところです。
回帰分析を用いた株価指数シミュレーションにおいては、
「あまり多くの説明変数(経済指標)を同時に使わない」ことも大事な心得です。
説明変数を多く組み合わせれば、一見高精度な株価指数の合成ができますが、
実際は多くて2つ3つくらいまでが適当でしょう。
統計学的にいうと「多重共線性」というのが、このときに、大きな問題に
なるのですが、ここでは深入りはしません。統計学に興味のある方は
ググって調べてください。
ここまでは過剰最適化の注意でした。
次に先行性の判断。
本当にその経済指標が相場判断に役立つかどうかは、
相関係数だけでは必ずしもわかりません。
たとえば、下記の相関を考えてみましょう。
(a)実際の株価の動きとよく連動するが、常に株価より遅れ気味に動いている経済指標
(b)実際の株価の動きと時々乖離してしまうが2-4カ月でサヤが収束する経済指標
どちらが、経済指標として使いでがあるか?
正解は(b)の方です。
いくら株価指数と動きが細かく連動していても、動きが遅れているようだと、
ウオッチしがいがありませんよね。
都合よく株価にぴったり数か月先行する経済指標はなかなかありません。
しかし乖離が生じて、それが数か月かけて収束していく経済指標というのは、
そうした乖離の縮小がトレードのヒントになることが実際にあります。
このあたりの活用判断は経験がモノをいう部分です。
グラフを作成して眺めてみて初めて、使いどころのイメージが湧いてくるようなところがあります。
別記事では、実際に私がどんなグラフを眺めてみるのか、実例を掲載してみます。