2020年2月のコロナショック暴落相場に関する一つの仮説
ツイッターでつぶやいているばかりで最近ブログ記事をさぼっていますが、
コロナショックの暴落相場からのリバウンドの可能性について考えてみます。
ご存じのように日経平均225のPBRが2/28時点で1.02まで下がっていること、
そして、金曜晩にパウエルが利下げを示唆したことから、
この週末に急速に買い安心感が広がっています。
個人的にもここで買いたい気持ちはなくはないのですが、
ツイッターその他をみていて、今回は
経済要因ではなく、ある種の自然科学的な、
コントロールの難しい問題に端を発しているわりに
買い安心感がありすぎるというところが、
ちょっと気になるのも本音。
しかし勘だけで悩んでいてもしょうがないし、
無所属の在野証券アナリストたるもの、
何かデータ的に類似した状況は
探せないものかと考えて、思い当たったのがコレです。
過去5年間の「株式投資」の検索回数推移(グーグルトレンド)
https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=today%205-y&geo=JP&q=%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E6%8A%95%E8%B3%87
この推移の横軸を合わせて、TOPIXのグラフと上下並べてみました。
(上半分がグーグルトレンドの表示画面、下が同期間のTOPIX指数の推移)
※クリックで拡大
グーグルトレンドをご存じない方のために簡単に説明すると、
「株式投資」でインターネットをキーワード検索された回数の
推移を表示しているグラフです。
このキーワードで検索する回数が増えているということは、、
株式投資に関する世間の関心が高まっているものと解釈できます。
そしてグラフを一見して、ちょっと驚けるのが、
今年の1月中旬、検索回数が非常に増えていた≒投資熱が高まっていた
という事実です(一番右の赤い線で囲った部分)
この検索回数は2年前の2018年1月(一番左の赤い線で囲った部分)、
VIXショックといわれた暴落直前の水準を上回って過去5年の最高
だったことがわかります。
2018年1月は2017年末のトランプ減税で先行き安心感が出て盛り上がったところで、
突然、奈落の底に突き落とされたんですよね。
かたや2020年1月は、2019年秋冬の上昇と「米中第一段階合意」を受けて、
トランプがこのまま株式相場をコントロールして選挙を迎えるはずだと
いう安心感が確かに蔓延していました。
なるほど2018年1月と2020年1月、シチュエーションが似ていたといえるかなと。
そういえば・・・1月にツイッターをしていて、やたらと
インデックス投資に関するつぶやきを見かけるな〜と
思っていたのです。
投資について世間の関心は高まり、
強気の人が増えていたという実感もあります。
ちなみに、もう一つ、中間に盛り上がっていた時期があるのです(2つめの赤い線で囲った部分)。
これは、2019年1月のリバウンド期のころです。
これは暴落相場の直後リバウンド中に回数が増えているので解釈が難しいです。
株式投資へのポジティブな関心が高まったというより、
2018年12月の凄惨な暴落相場で大損した投資家が相次いだことで、
マイナスの意味で世間の関心が高まっていた可能性が高いかなと思いました。
しかもですね、1月末に「サンバイオショック」が発生した頃でもあるんですよね。
ちょっとモヤモヤしますが、2018年1月や2020年1月とは状況が異なるので、
今回はこの19年1月の解釈は横に置いておくことにしましょう。
短期要因で下げたはずが2番底3番底をつけ・・・
ここからは2018年のVIXショックと2020年のコロナショックの比較に絞って話を進めましょう。
TOPIXの推移を重ねてみます。
上の青線がVIXショック。下の赤線が今回のコロナショックで起点は暴落前の2月7日としました。
※クリックで拡大
こうしてみて思い出すのは、2018年のVIXショック、当時は
リスクパリティ戦略失敗の売りが出たとか、
AI売買のせいだとか、パウエルのタカ派発言のせいだとか、
さも一時的な要因の暴落のように言われていましたが、
本当のリバウンドまでけっこう時間がかかったということですね。
あとになって、このVIXショックは、ただの一時的要因だけではなく、
中国の景気減速を織り込み始めていたことが、
その後の輸出や工作機械受注などからわかったわけです。
2018年2月のリバウンドは絵にかいたような半値戻しでした。
3月初めと3月末に、2番底と3番底があり、じわじわと
下値を掘っていたことを確認できます。
今回の反騰期待にも不安が
2020年の今回も、コロナショックは、気候が変われば収束に向かい、
一時的な株安はすぐ収まるという期待感がありますが、
本当にそうでしょうか。
中国を含むサプライチェーンがすぐに立て直されるのかという
日米共通の課題もあるし、
日本特有の、中国向け輸出はすぐに回復するのか、
消費増税で悪化した内需がすぐに持ち直すかなども、不透明です。
2019年4QのGDP悪化を受け、エコノミスト筋では
「2018年冬からの景気後退局面入り」認定の公算大ともいわれています。
さらには、トランプが本当に再選できるかどうかにも、
いまひとつ確信がもてないなか、民主党左派の
躍進もウォール街は気にしている状況。
となると、VIXショックのように、いったん
半値戻しはするものの、しばらくしてまた同じ水準に
戻る、そのあと1/4戻しして、さらに下値を掘る、
というのは十分、あり得るシナリオのようにも感じられます。
もちろんこれはただの過去からの類推ですから、
まったく異なるリバウンドのパターンがこれから
待ち受けるかもしれませんがね。
VIXショックと、コロナショックは、問題の性質が
まったく異なるじゃないか、といわれれば、
その通りです、と言わざるを得ません。
しかし、20年近く前のSARSショックになぞらえたり、
10年前のリーマンショックと比較して云々の議論もあるなかで、
「株式投資」熱が同水準に高いところから暴落に見舞われた点が
類似する2年前のVIXショックとの比較も、まあアリではないでしょうか。
(2020年3月1日)