マザーズ投資家の不幸感を数値化してみたら、びっくりするほど悪かった【11/17】

 

 

データのビジュアル化を何気にやってみているうち、結構興味深いことがわかったので、公表してみます。

 

 

株式評論家に寄せられる“日経平均が上がっているのに私の持ち株が上がらない”という嘆きの声

 

成長期待あるいは昇格期待などが大きい企業が集まっているマザーズ市場が、個人投資家に好まれる市場であることは、特に説明を要しないと思いますが、ここ2年間は期待を裏切られ続けています。

 

マザーズ市場が盛り上がらないことが、個人投資家の大きな悩みの一つなのは間違いないところで、

 

先日見た、「マーケットアナライズプラス」という投資家向けテレビ番組でも、
オンデマンドへのリンク

 

「日経平均は上がっているのに私の持っている株は上がりません。なぜでしょうか」

 

という質問が取り上げられていました(オンデマンドで24分20秒あたり)。

 

「ああ、株式投資の講演している人は、こういう質問をされることが増えているんだろうなぁ」としみじみと思わされました。

 

この番組では、マザーズ市場の動きがおかしいとか、そういう分析はされていなかったのですが、ヤフーファイナンスでみると、マザーズ市場(ここではETFで代用)のここ2年間の低迷っぷりはこんな感じです(「2516」とあるのがマザーズ指数に連動するETFのチャート)。
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どんなときマザーズ投資家は、ご機嫌になったり、不幸な気持ちになるのかを考えた

 

 

そこでマザーズ投資家の「気分」というのは、長い相場の歴史でどのくらいの悪さなのかということを、指数化してみようと考えてみました。

 

私がここで考えた想定は、

 

 

日経平均が下がっているのにマザーズが上がっているときがキモチイイ
日経平均が上がっているのにマザーズが下がっているときがムカツク

 

 

というものです。
個人的にもそういう気持ちがありますし、これに反対意見はあまりないと思います。

 

この考えに基づいて、こんな図を考えてみました。
日経平均とマザーズの伸び率の関係を表すグラフです。

 

横軸が日経平均の伸び率、縦軸がマザーズ指数の伸び率です。
斜めに入った赤線は、日経平均とマザーズの伸び率が等しい均衡点をつないだ境界線です。

 



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いきなり顔文字の入った図で恐縮ですが、
マザーズ投資家の気分循環図」と私は名付けました。

 

日経平均が上昇、マザーズも上昇するが日経平均ほどではない・・・(a)
日経平均が上昇、マザーズはそれを上回る上昇・・・・(b)
日経平均は下落、マザーズは逆行で上昇(c)
日経平均は下落、マザーズも下落するが日経平均ほどではない(d)
日経平均は下落、マザーズはそれを凌駕する下落(e)
日経平均は上昇、マザーズは逆行で下落(f)

 

この循環を実際に確認してみると、こんな感じです。

 

 



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これは、直近の10月〜11月の動きを実際にプロットしたものです。
横軸・・・・日経平均指数の5営業日増減率(毎週金曜日の値)
縦軸・・・・マザーズ指数の5営業日増減率(同)
で、起点は左下の赤い点で、時計と逆回りに動いています。

 

この図では、2指数の増減率が等しい均衡線を薄く引いておきました。

 

日経平均が上昇してそれ以上にマザーズが上昇した位置の点は2つあるので、

 

わりと幸福(^o^)」を感じられた時は2週間、
日経平均が下がりマザーズが上昇する「幸福感MAX(*^_^*)」の週はなかった、

 

ということです。

 

私は過去3年分くらい同じように四半期ごとの図を作ってみたのですが、常にこのように時計と逆回りを描くわけでもなく、いろいろな形のものがあって、興味深いものでした。分析好きの私はそれを眺めているだけで飽きないのですが、それを全部アップしても焦点がぼけるので、話を次に進めます。

 

幸福感のあった週と不幸感のあった週の比率を出して各年の推移をみてみる

 

ここまでで、マザーズ投資家の気分を日経平均とマザーズの伸び率の関係によって6つの種類(a)〜(f)に分類したことは説明しました。

 

そこで、手元にある2007年1月12日以降のデータを使い、各年次では、それぞれどのくらいの比率だったのかを調べました。

 

ただし手間の都合上、
・増減率の判定は毎週金曜日で固定、祝日は考慮しない
としたので、金曜日が祝日だったときのデータが若干抜けていることはご了解ください。2007年1月12日〜2019年11月15日で金曜の立ち合いがなかった日が23回あるのですが、正月休みやGWもありますから、これを精査して修正するのは大変なのです。
また、週の途中で祝日があった場合も特に修正はせず、単純に5営業日前の引け値と比較しています。

 

結果はこうなりました。

 

7年

8年

9年

10年

11年

12年

13年

14年

15年

16年

17年

18年

19年

a

11

4

11

8

3

9

4

10

8

4

8

5

4

b

3

8

12

13

15

12

20

12

10

14

15

14

15

c

13

7

8

9

7

12

8

6

8

8

11

2

4

d

5

5

8

9

6

4

2

3

5

3

5

1

3

e

2

18

6

6

12

6

6

11

11

13

8

21

10

f

15

10

5

6

5

7

11

8

9

8

2

7

9

年間合計

49

52

50

51

48

50

51

50

51

50

49

50

45

 

 

各年の構成比率に置き換えるとこうなりました。

 

7年

8年

9年

10年

11年

12年

13年

14年

15年

16年

17年

18年

19年

a

22%

8%

22%

16%

6%

18%

8%

20%

16%

8%

16%

10%

9%

b

6%

15%

24%

25%

31%

24%

39%

24%

20%

28%

31%

28%

33%

c

27%

13%

16%

18%

15%

24%

16%

12%

16%

16%

22%

4%

9%

d

10%

10%

16%

18%

13%

8%

4%

6%

10%

6%

10%

2%

7%

e

4%

35%

12%

12%

25%

12%

12%

22%

22%

26%

16%

42%

22%

f

31%

19%

10%

12%

10%

14%

22%

16%

18%

16%

4%

14%

20%

 

 

どの年がよくてどの年が悪かったか、直感的に把握したいので、ここで、指数を作ってみます。
幸福感のあった期間の比率ー不幸感のあった期間の比率、で表すことにしました。

 

幸福度=【「わりと幸福」(b)の割合】 + 【「幸福感MAX」(c)の割合】 − 【「不幸感増加」(e)の割合】 ー 【「不幸感MAX」(f)の割合】

 

MAX幸福度=【「幸福感MAX」(c)の割合】 − 【「不幸感MAX」(f)の割合】

 

2種類の定義をしました。
なぜ二種類考えたのかというと、
二つ目のMAX幸福度の方が、幸福感と不幸感がはっきりしている時期(=日経平均とマザーズが逆行している時期)だけで引き算しているのですが、日経平均とマザーズが逆行する週はそんなに多くないはずなので、ちょっと精度に不安を感じたからです。
一つ目は広めの範囲で幸福感と不幸感の発生週を定義してあるので、補助的にこちらの結果もみたほうがいいだろうと考えました。

 

 

株価チャートだけではわからない、2018年マザーズ市場がびっくりするほど不幸だった事実

 

 



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※CYはカレンダーイヤー(暦年)の略称
※※17年(「17CY」と表記)のMAX幸福度(赤棒)と、19年の幸福度(青棒)は、値がゼロでした。

 

グラフをみると、とにかく18年の悪さが目立ちます。

 

これは株価チャートを見るだけでは気づけない事実で、
下げ幅だけでいえば、リーマンショック年の2008年の方がひどかったのです。
マザーズ指数の減少率は、2008年が-58.7%、2018年が-34.0%でした。

 

しかし、この調査をしてみてわかったのは、

 

2018年と2008年は「嫌な気分にさせられる期間の比率」は同等だった
違いは、リーマンショック年は「ドカン!」と下げ、2018年はじわじわと下げたこと。

 

ということです。

 

日経平均とマザーズの逆行期間だけをみると、赤棒が示す通りなのですが、
MAX幸福度=「幸福感MAX」(c)「不幸感MAX」(f)
     = 4ー14 = ▲10%
で、不幸感MAXの度合いはむしろリーマンショック年の▲6%を超えています。

 

とはいえ、発生頻度が低いので、やはり広めの定義でも不幸感があった期間を確認するべきでしょう。

 

グラフの青棒の下側への伸び具合が2008年と2018年ほぼ同等なのはグラフで確認できました。
不幸感と幸福感それぞれの時期の内訳をみると、
「不幸感増加」(e)および「不幸感MAX」(f)の比率を足した結果
2008年が35+19=52%
2018年が42+14=56%
不幸感を感じた週の比率は2008年を上回っていました

 

これに対して、幸福感を感じた(b)と(c)の比率は
2008年が15+13=28%
2018年が28+4=32%
と少しだけ2018年が多いのですが。

 

それを考慮しても、
2018年はリーマンショック年と同等にマザーズ投資家が不幸な気持ちにさせられた1年だった
と結論できます。

 

2019年になっても、マザーズ投資家がなかなか元気になれない状況に理解が深まったのではないでしょうか。

 

2019年はどんな1年になっているのか

 

2019年は、

 

広い方の定義でみると
幸福度= 33+9−22−20 = 0
で、まあバランスはとれているように見えます。

 

ところが狭い定義、すなわち日経225とマザーズが逆行している時期だけでみると、

 

MAX幸福度= 9−20 = ▲11%
と、実は、2019年も2008年や2018年と同じくらい悪い数字です。

 

特に注目に値するのは、
(f)の不幸感MAX状況(日経平均が上昇してマザーズが下落する状況)は、2019年は20%もあり、2008年や2018年よりむしろ多い
ということです。

 

実はこれより不幸感MAXの時期がワーストに多かった年がありまして、2007年はなんと31%もありました。
ただし2007年はライブドアショックが前年にあった年で、新興市場に対する世間の信頼感がひどく下がった時期でもあります。

 

2013年も2019年より多く、22%ありましたが、この年はアベノミクス初期で、幸福度は高かった年です(上のグラフの青棒が上に伸びているのを確認してください)

 

それを踏まえると、特に大きな事件もないのに日経平均と逆行した下落が多すぎる2019年のマザーズは「ここ10数年でもかなりひどい状態」と言ってよいと思います。リーマンショック前年の2007年と似た状態だということ自体が不吉でもあります(別記事で書きましたが、小型株を置いてきぼりにした大型株の上昇は、決して良い兆候ではなく、FRBが利下げを行ったものの金融相場から逆業績相場に逆戻りした2007〜2008年の成り行きを想起させます)。

 

 

残りの1か月半、まだ数字が変わる可能性はありますが、マザーズ市場を好む個人投資家が元気になれない理由、わかりましたね。

 

特に私は、「なんで、1570のETFの信用売りが逆日歩がついていてもなかなか減らないんだろう」というのがちょっと不思議だったのです。しかし今回、マザーズ市場のこの惨状をみると、「私の持ち株が上がらないのに、225がこんなに上がってるのはおかしい」とついついショートしたくなる人の気持ちがよくわかる気もしてきました。

 

 

老後資金2000万問題とか、いろいろ投資活性化の必要性が叫ばれたりもした年でしたが、もし、株式投資にはじめて興味を持った人が、マザーズ投資家に「株式投資って自分にもできるかな?」と尋ねたときは、こんな答えがされているのかもしれません。

 

「日経平均は上がっているのに、どういうわけか、持ち株が全然上がらなかったり、下がったりすることが多くて、わけがわからないよ。株式投資は難しいね」

 

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