米中交渉はまだ出発点。問題の焦点を深く理解するのに役立つ、レポート記事3つを紹介
今回の米中会談の報道で、
問題の焦点が、貿易不均衡よりむしろ、
中国における次世代技術産業のありかたであることが
明確になりました。
NHK:
声明は、中国が貿易の不均衡を是正するためアメリカから農産物やエネルギー、
それに工業製品などを買い入れ、特に農産物はすみやかに購入することで合意しました。
そのうえで、アメリカ側が不満を強めていた中国による知的財産権の侵害や強制的な技術移転、
そのうえで、アメリカ側が不満を強めていた中国による知的財産権の侵害や強制的な技術移転、
それにサイバー攻撃の問題で交渉を始めることを決め、
90日以内に合意できなければ、2000億ドルの輸入品にかける関税を25%に引き上げるとしています。
「え?中国がアメリカの貿易赤字解消に協力するといったのに、まだ解決しないの?」
と思った方のために、
たぶんこのへんの解説が参考になるかなと思ったのをいくつか挙げておきます。
多少重複する内容もありますが、それぞれ、少しずつ違った角度から書かれていて、
読み応えがあります。
安全保障貿易情報センター(CISTEC) : CISTEC Journal3月号
USTRが中国のWTO遵守状況に関する年次報告書を発表
http://www.cistec.or.jp/service/china_law/cistec-01-03_tokusyuu03.pdf
USTRが中国のWTO遵守状況に関する年次報告書を発表
http://www.cistec.or.jp/service/china_law/cistec-01-03_tokusyuu03.pdf
米国通商代表部USTRのライトハイザー代表は昨夏から、中国の
技術移転などの問題点について危機感を語り始めて
いたようです。
それが公式に打ち出されたのが、
今年1月の年次報告書でした。
この中の「3 ハイテク技術の流出に関する言及」は、
中国の技術ノウハウ獲得が、公正競争とは言い難い手段で
進んでいるという米国の危機感を解説したものです。
富士通総研:5月11日付
「『中国製造2025』はなぜ米中貿易紛争に巻き込まれたのか?」
http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2018/2018-5-1.html
「『中国製造2025』はなぜ米中貿易紛争に巻き込まれたのか?」
http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2018/2018-5-1.html
中国が2015年に発表した「中国製造2025」について
なぜアメリカが注目するようになったのか、
何が問題点なのか解説しています。
中国製造2025とは、国策として「ハイテクキーパーツの国産化」を掲げたもので、
他国とサプライチェーン共同体を構築して貿易推進する方向性とは
逆を向いたものであることを明確に指摘しています。
独立行政法人経済産業研究所:6月4日付
「米中経済摩擦の新段階― 焦点は貿易不均衡から技術移転へ ―」
https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/180604ssqs.html
「米中経済摩擦の新段階― 焦点は貿易不均衡から技術移転へ ―」
https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/180604ssqs.html
「技術移転」というキーワードが今後ますます大きくなると
思われますが、そのキーワードについて前半で具体的に解説しています。
また、後半に、対米外国投資委員会(CFIUS)が、
中国資本によるM&Aをどう阻止するようになったか、
まとめた表があるのも参考になります。
ついでに、私の感想ですが、
アメリカが要求しているのは、要するに
「国家主導でなく、自由競争、民主主義的に競争しろ」
「中国企業の不正な技術ノウハウ取得を取り締まれ」
ということであって、身もふたもない言い方におきかえると、
「中国製造2025という国家施策をやめなさい」
「法治国家として、外資系企業をフェアに扱いなさい」
というのと同じなのではないかなと。
いきなり受け入れるのは、中国にとってはカルチャーショックに等しい、
というより、習主席の威信にかかわるのではないでしょうか。
わずか90日間で、中国がこれらの問題で、アメリカを納得させられる対策を示せるか・・・
ただの想像ですが、次回は、
中国から、ぼんやりした目標管理が提案されて、
アメリカがその実効性や検証可能性にこだわる、
という
押し引きになるのではないかなと。
それでも2者とも決裂はしたくないので、追加関税の再延期はありえるでしょうが、
アメリカにすれば、現状でもじわじわと中国経済が下り坂に向かう流れは
作ったので、中国が根負けするまで、安易な妥協はしないでしょう。
その間に、来年早々から日米でも、二国間交渉が始まってしまうわけですが、
個人的に気になるのは、
日本企業でも、次世代技術関連で中国にすりよっている大企業が結構あることです。
売り煽りととられたくないので、どことは書きませんが。
人工知能とか、IoTとか。
よりによって「中国製造2025で戦略提携」なんてヘッドラインで
報じられたケースまであったりします。
アメリカから何か言われたりしないんですかね。
これは有名だから書きますが、
川崎重工みたいな残念な技術移転の前例がすでにあるだけに。
東洋経済:川重が新幹線「N700S」開発から外された事情
https://toyokeizai.net/articles/-/211939
https://toyokeizai.net/articles/-/211939
アメリカが、通商交渉で日本にどんなことを言ってくるか、
想定するうえでも、
アメリカの危機感がなんなのか、
きちんと理解しておきたいところです。
そもそも
グーグルが人工知能の拠点を中国に作ったとされていますので、
そちらも気になりますね。
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