(あと4時間ほどしか無料では見られませんが)・・・・9962ミスミについてクチコミ情報をみての感想
このブログではこれまで個別企業のミクロな業績について、話題にしたことはまったくありませんでした。
それは、私が株式市場を見てきた感想として、株式投資は
「マクロ経済の良しあしの見極めが7割、個別銘柄の選択が3割」
と個人的に考えているからです。
なぜそう思うのか、これは極めて個人的な考えなのですが、端的にいいますと、
「下落相場でも上昇できる個別銘柄はせいぜい3割」
だというリサーチを、私は以前にしたことがありまして、それを行ったのはずいぶん昔なのでデータを引っ張りだせないのですが、
おそらく今も変わらないのではと思っています。
もちろん、「投資の王道はBuy and Hold」という信念の下、
レンジ相場や下落相場でもひたすら個別企業の分析にいそしむ方も世間にはおられますし、
そういうスタンスをとらざるを得ないセルサイドのアナリストも大勢おられるわけで、
それも一つの行き方と思います。
私は、ただの個人ですし、個別企業のスクリーニングに情熱を傾けるより、
相場トレンドの見極めの方がなんとなくモチベーションが高いので、
特に今年になってからは、経済動向の情報ばかり気にしているのが本音です。
ただ、個別企業の業績の話題が嫌いというわけでもないのです。
10本記事を書いたら、1−2本くらいはミクロな話題もないと、バランスが悪いのかな、とときどき考えたりもします。
で、そんなこともあり、たまたま軽く話題にしてみたいなと思ったのが、9962ミスミのことです。
なぜそう思い立ったかというと、ご存じの方は多いと思いますが、ネットには「Vokers」という社員や元社員が会社について論評するクチコミサイトがありまして、1日1社、限定的に情報を非会員も読めるのですが、今日はたまたまそれがミスミだったのですね。
https://www.vorkers.com/company.php?m_id=a0910000000Fs4D&v=b_today_company-20180805070008-714q6-1
※8月6日月曜に日付が変わったとたんに、ほとんどの情報が非公開で見られなくなります。月に1000円払えばいつでも見られるようになります。
ミスミというのは、知る人ぞ知る有名な方が長年、CEOを務めた会社です。
その方は、三枝匡氏。『V字回復の経営』(日本経済新聞社)などの著作でも知られる、事業再生コンサルタントです。その方が、CEOとなり、経営者育成をする、となったのが16年前の2002年です。どうなるんだろうか、と私も時々気にして、この企業の情報は気にかけていました。
実はもうかなり前のことですが、CEO就任後の三枝氏とは、運よく、たまたま直接話を伺う機会に恵まれたことが昔にあり、非常の筋の通った、論理的に話をされる方だったことを覚えております。
三枝匡氏は一種のカリスマリーダーであり、2014年から徐々に後進に道を譲ってはいるものの、おそらくは今でもそれなりの影響力を持っていることは容易に想像できるところです。
ただですね、やはりマネジメントというのは難しいな、と三枝CEO時代のミスミを見ていて思った部分もありました。彼自身も部分的には認めていましたが、やはりすべてがうまくいったわけでもない、というところです。
たとえば、
・社内公募制で事業創出を図っていた結果として海外進出が遅れたとか(率直に問題を認めて対策は講じていましたが)、
・経営人材を育てるといいながらある時期は事業部長や執行役員クラスがヘッドハンティングした人ばかりになっていたり、
・IT面に関しては取り立てて戦略的な取り組みが見られない、
といったところです。
こういうと、いかにもネガティブな評価となりますが、これはもともとの期待値が高いゆえの感想でもありまして、株価的には、
2009年の最小値と2018年の最大値でとらえれば、いわゆる「テンバガー銘柄」であり、堂々たる推移といってよいでしょう。
2005年の株価は700円前後、リーマンショックの直後2009年には330円台まで下がった時期もありましたが、その後は継続的に上昇を続け、
今年1月には3500円台まで上昇しました。直近では3000円を少し切ったくらいの位置にあります。
ただ、この先はどうなるでしょうか。
カリスマ経営者に牽引されてきた企業という視点でみると、戦略的な発想で事業に取り組む人材を多く育成しようという三枝イズムというものをどう引き継ぎ、一方で、三枝氏ではうまくやれなかった部分を後継者がどう強化できるのかという視点でウオッチすることになります。
また、中国は経済的にやや混乱し始めていますから、中国に拠点を置くことが成長力となってきた企業であれば、それが今後どんな逆風となりえるかも気にせざるを得ない状況ともいえます。
さて、そういう視点を持ちつつVokersを眺めてみると、いろいろ考えさせるものです。
特に「経営者への提言」「入社後のギャップ」「企業分析」などから私は重点的に読み始めます。
いずれも断片的な情報ですから、個々の情報が株価的にどうなのかというような論評は難しいのですが。
わりと目についたのは、カリスマ的なトップがけん引してきた組織にはありがちですが、トップダウン文化が強く、上の意向に沿って仕事をすることが必要というような系統のコメントが目立つところですね。統制がとれている組織ともいえるのですが。
一方で、若手社員のやらされ感が強く定着率が低いとか、マイクロマネジメントが過度だとか、新卒入社組と中途採用組の社員の仲が悪いといったコメントも見受けられます。
それらを踏まえてのあくまで個人的な意見ですが、特に感じたリスクとしては2点。
上と下で意識の断層が大きいのではないか・・・・・往々にして面従腹背の得意な現場ができあがることにつながります。それが不祥事の芽となるケースもありますので、ちょっと気を付けてみていく必要があるなという印象は受けます。
トップダウン志向が強いゆえの弱点はないか・・・トップダウン志向の会社は、トップが現場をよく見ていて、変化に敏感であるうちはうまくいきますが、慢心が生じればライバルの脅威を見過ごすことにもつながります。特にこの会社は、情報システム面はあまり強くないという弱点がありますから、そうした面のオペレーションが得意なライバルが強くなってきたときにどう対処するのかなという感想も持ちました。
これらは、現状ではあくまでリスクの「芽」にすぎませんので、今のうちにつぶすことももちろん可能といえるでしょう。
さて、この投稿を、企業分析として完結させようとすれば、「三枝氏の後任の大野CEOの手腕は」「ライバルの動向は」というところまで触れないといけないのですが、正直なところ、そこまでこの企業について下準備をしたうえでこの投稿を書き始めたわけではありません。
ただ、効率的に、ある一企業の実態を探ろうとするのであれば、こうしたクチコミサイトにも目を通すことで、断片的ながら、効率的に情報収集ができるという一例として今回は、ちょっと軽く触れてみようと思いました。ミスミは、以前から印象に残っている企業でもありますし、今後も時々ウオッチしていくつもりではあります。
次回はまたマクロな視点で書く予定。