ドル円USDJPYと日経平均NK225、お互いを先行指標として観察する意味はあるか
投資家投機家の集まる掲示板などをみていると、株をいじっている人はドル円USDJPYの動きを気にしているものです。
その現象だけを捉えると、ドル円を、株式相場の先行きを示すものだと捉えている人が多い、となりますが、どうでしょうか?
ドル円をトレードする人は逆に日経平均のチャートを見るという話を聞いたことがあるので、そちらも検証してみたい。
■でもどうやって?■
ただし、「先行指標の検証」はなかなか難しいのです。
僕の知る限り、統計学の本で「先行指標は数学的にどう定義するべきか」が論じられているものは見たことがありません。
書籍で、先行指標を論じる記述を見かけるのは、株の本などで、チャートを重ねてみて、先行しているように見える見えない、程度。
そもそも「予測のための統計処理」というのは統計学の学問分野にはありません。
時系列データをモデリングする、それ以上のものでも以下のものでもないのです。
そこを勘違いすると、LTCMのように過去の検証だけで未来を制覇した気になって、過分なリスクをとる頭でっかちのお馬鹿さんになってしまいます。
とはいえ
予測性があるかどうかは怪しくとも、過去の傾向だけでも手掛かりに知っておきたいところではあります。
そこで検証方法としては、アイデアを2つ考えてみました。
検証パターンA:
ドル円と日経平均のタイミングを片方ずつずらしたデータの相関係数を調べて、どちらが相関係数が高いか比較する
(コトバとしてちょっとわかりづらいかもしれませんが、すぐあとで具体例を書きます)
検証パターンB:
移動平均線の上下がドル円と日経平均で食い違ったときに、どちらが先導するのかを調べる
■検証パターンAをやってみた■
使用データ:パンローリング社チャートギャラリーの日経225指数の日足と、ドル円日本時間(am9-pm5)のデータ。2008年1月4日〜2018年4月24日
(1)
目的変数:日経平均の前日比(伸び率の%)
説明変数:ドル円の1日前の前日比、2日前の前日比、3日前の前日比、4日前の前日比
あるいは
(2)
目的変数:ドル円の前日比
説明変数:日経平均の1日前の前日比、2日前の前日比、3日前の前日比、4日前の前日比
回帰式にあてはめてみた結果
(1)
回帰統計
重相関 R0.075206785
重決定 R20.00565606
補正 R20.004077737
標準誤差1.611541097
観測数2525
分散分析表
自由度変動分散観測された分散比有意 F
回帰437.227230179.3068075443.5835870860.00639832
残差25206544.603062.597064706
合計25246581.83029
係数標準誤差t P-値下限 95%上限 95%下限 95.0%上限 95.0%
切片0.028 0.032 0.873 0.383 -0.035 0.091 -0.035 0.091
X 値 10.142 0.046 3.066 0.002 0.051 0.233 0.051 0.233
X 値 2-0.049 0.046 -1.064 0.287 -0.141 0.042 -0.141 0.042
X 値 3-0.079 0.046 -1.702 0.089 -0.170 0.012 -0.170 0.012
X 値 4-0.041 0.046 -0.893 0.372 -0.132 0.050 -0.132 0.050
(2)
回帰統計
重相関 R0.063860746
重決定 R20.004078195
補正 R20.002497367
標準誤差0.690550895
観測数2525
分散分析表
自由度変動分散観測された分散比有意 F
回帰44.9207880871.2301970222.5797836510.035634268
残差25201201.6885580.476860539
合計25241206.609346
係数標準誤差t P-値下限 95%上限 95%下限 95.0%上限 95.0%
切片0.002 0.014 0.110 0.913 -0.025 0.028 -0.025 0.028
X 値 1-0.019 0.009 -2.260 0.024 -0.036 -0.003 -0.036 -0.003
X 値 20.013 0.009 1.521 0.128 -0.004 0.030 -0.004 0.030
X 値 3-0.013 0.009 -1.502 0.133 -0.030 0.004 -0.030 0.004
X 値 4-0.003 0.009 -0.390 0.697 -0.020 0.013 -0.020 0.013
■検証パターンAの結果の考察■
前日までの値動きを先行指標として意味があるかどうかという
疑問に対して、
回帰式で調べた印象では、
株式トレーダーはドル円を見る必要はないし、
FXトレーダーは日経225を見る必要はない
となります。
(1)も(2)も、R2が0.005とか0.004というのは、はっきりいって近似式としては失敗です。t値だけみると、そこそこ使えると勘違いしそうになりますが。
まあ前日までのドル円で当日の日経平均の前日比が予想できてしまえば誰も苦労はないわけで。そりゃそうだよな、という結果ではあります。
一応、予測数値と実際の数値の散布図も観察しましたが、まったく意味ないなという形をしていました。
ごくごくわずかな差ですが、「日経平均をドル円で予想する」ほうが「ドル円を日経平均で予想する」より影響度が上かもしれない、ということはR2の大小から見て取れる程度です。ただし有意の差ではない、という意見もあるでしょう。
なお、分足レベルで先行性があるかどうかは調べていませんが、もともと私は分足を観察してトレードするようなスキャルパーではないので、
これについては、いずれデータが手に入ったら、ということで宿題にさせてください。
■検証パターンBについての予告■
で、ここで検証を終わりにしてもよかったのですが、
一応、パターンB「移動平均線の上下がドル円と日経平均で食い違ったときに、どちらが先導するのかを調べる」
をやってみたところ、何か傾向がなくもない?と思われるような結果も出てきました。
これについては次回に