アメリカの長期金利上昇は本当に悪材料なのか?

だいぶ間が空きましたが、とりあえず、最近何をやっていたかといいますと、本来ブログを書くことに充てていたはずの時間を、ふとしたことで入会してみたNewsPicksでのコメント書きにあてておりました。そう、<3966>ユーザベースが運営するあの経済ニュースのSNSソーシャルブックマーク(追記:あとで気づいたのですがこの分類の方が適切ですね。修正します)です。

 

世間では、このサイトのコメントの質はどうなのか、とかいろいろいわれていますが、結論としては、経済関連でアクティブにコメントされる専門家(銀行やファンドの関係者)の方々をウオッチしているだけでも、そこそこ値段に見合っているように感じます。

 

たとえば、経済指標関連の記事について

 

・どんな記事にコメントをつけているのか(どんな経済指標をウオッチしているのか)

 

・指標をどう要素分解しているのか

 

をコメントから読みとることで、自分の経済に対する視点や興味が、専門家と一致しているのか、いないのか、チェックするのに役立ちます。

 

ただ、いまのNewsPicksは、「プロピッカー」と呼ばれる先行アクティブユーザーと、そうでない普通のユーザーとの階層構造ができあがっており、さらに匿名のアカウントは意図的に目立たせない画面設計になっているので、そういう意味では、それほどソーシャルメディアの楽しみ方ができるプラットフォームではないかな、という印象も受けました。

 

私の周りでも「いったんNewsPicksを購読してやめた」という人が何人かいるのですが、この階層的な構造のなかで、あまり溶けこめなかったのかなと思います。

 

僕もいつかはNewsPicksに飽きるかもしれませんが、いまのところは、「Newspicksで取り上げられていなければ見過ごしていたかもしれない」と感じるような話題に触れる機会があり、また、海外事情に詳しい人のコメントなどに面白さを感じることもあるので、まだリードオンリーで続けようかな、と思っています。

 

とはいえ、やはり自分のブログをほったらかしにしているのは反省しておりまして、こちらでももう少し話題の幅を広げて書くことにしようかなと思います。

 

とりあえず、ここ2か月ほどの動きで言えば、大きな話題はアメリカの金利の動きだったかと思います。

 

2月初め、株価が下がったときに、「長短金利差を見ると、リーマンショックの再来はない」ということを書きましたが、その後も、長短金利差はじわじわと縮まっていきました。このフラット化(=長短金利差が0に近くなる)はどうなのかという記事がロイターやブルームバーグなどで出ていました。

 

たとえば4月18日のブルームバーグの記事
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-04-17/P7C7A46TTDS801
「米政府の財政拡大は株式のレンジ相場と米国債利回りのフラット化を後押しする」
「当社の見方では、株価は年内に景気循環のピークに達する」

 

とモルガンスタンレーの見解。このままフラット化が進むにつれいよいよ景気後退が始まるぞという内容だったのですが、

 

すぐそのあと4月21日にロイターからはこの記事
サンフランシスコ地区連銀総裁が
https://jp.reuters.com/article/williams-rate-idJPKBN1HR2KS
「FRBがバランスシートを縮小させ、連邦政府が国債発行を拡大させるなか、イールドカーブはスティープ化していく公算が高いと述べ、それほど懸念していない」

 

かみくだいていうと

 

「国債を増発するから長期国債の金利が上がって長短金利差はまた拡大する(=フラット化しない)よ」と発言しました。

 

 

結果的にこの連銀総裁の見解はすぐに現実となり

 

4月25日に
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-04-24/P7P2206K50XT01
「10年物米国債の利回りが24日の米市場で一時、3%を突破」

 

となりました。

 

いざこうなってみると

 

https://jp.reuters.com/article/stock-us-close-0420-idJPKBN1HR35E
「10年債利回りUS10YT=RRが2014年1月以来の水準に上昇したことも、市場の警戒感を招いた」

 

https://this.kiji.is/361602324772340833?c=113147194022725109
「24日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は5営業日続落し、前日比424.56ドル安の2万4024.13ドルで取引を終えた。米長期金利の指標となる10年債利回りが一時3%台に達し、景気への悪影響を警戒する見方が強まって、売り注文が広がった」

 

と手のひらを返したように長短金利差の拡大がむしろ売り材料ということになってしまいました。

 

ちなみに日経は
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29755600U8A420C1000000/
「財政悪化を背景にした「悪い金利上昇」へと転じるリスクは消えない。」という文章で、にわかに「悪い金利上昇だ」という見解が浮上したことを伝えていますが、その直後で「米資産運用大手TCWの債券部門の共同責任者、ライード・ランドマン氏は「緩やかな経済成長のもとで米長期金利は3.5%が適正」」というコメントも掲載しており、長期金利3%という水準が悪いのか適正範囲なのか、判断を避けた両建ての記事になっています。

 

 

こうして、長期金利が上がるも下がるも売り材料、という様相のなかで、

 

27日にはちょっと明るい話題
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29967410X20C18A4EA4000/
「米商務省が27日発表した1〜3月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比年率換算で2.3%増だった」「1〜3月期の実質経済成長率は、市場予測(2.0%)を上回った」

 

と市場コンセンサスよりも強い数字が出たので、またちょっと雰囲気がよくなって株価は戻しました。

 

今回株価指数S&P500のグラフは載せませんが、実際の動きと対比すると、24日に長期金利上昇が原因?で一時的に売り込まれ、そのあと、何事もなかったように27日には事前の水準に戻っていることを確認できます。

 

こんなわけで、経済指標の数値の動きは、そのときの状況次第でなんでも売り材料にされてしまうものなんですね。

 

まあ経済の専門家は、なまじ細かい数字が頭に入っているので、いろいろロジックをふりかざしたくなるのでしょうし、潜在成長率が下がっているから3%は高すぎるとかどうとか・・・・それが合っているか間違っているかなどという細かい議論までここでは首を突っ込む気持ちはございません。

 

 

 

株式投資家はもっと単純な理解でよいと思っています。

 

実際のところ、

 

今回のポイント「長期金利上昇にいちいちビクつかないといけないのか」

 

ということに関しては

 

「FRBが金利を上げている間に、大暴落が発生したことはない。概ね株価も順調」

 

というのがシンプルな事実です。

 

これは政策金利と株価の相関を観察すれば、簡単にわかることなのです。

 

ちゃんとグラフを作ってくれている記事を探してみましょう

 

(お前が作れよ、と突っ込まれると思いますが、違う種類のデータを重ねたグラフって面倒なんですよね。今回はご勘弁を)

 

ちょっとググった感じでは、この記事のグラフはわかりやすいです。
「投資家Life」さんのサイトの記事
https://frogkablog.com/federal-funds-rate/
「アメリカ政策金利とNYダウの推移」のグラフを見てください

 

この2000年、2005-2006年のあたりが、おそらくいまの状況に近いのかなと思います。

 

政策金利が上昇している間は、おおむね株価も順調であったことがわかります。要するにFRBはちゃんと景気の過熱感をみて利上げを行うと信用してよいでしょう、ということです。

 

むしろ、そのあと2001年や2007-2008年、FRBが金利引き上げをピタッと停止させる、もしくは下げ始めたときが危険だ、ということもこのグラフから読み取れるかと思います。

 

ということで、今回はアメリカの長期金利について書きました。

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