追悼・山口正洋氏(ぐっちーさん)。長年メルマガの読者でした
丸紅、モルガン・スタンレー、ABNアムロ出身で、フリーのコンサルタント、経済評論家として活躍されていた山口正洋氏(ぐっちーさん)がお亡くなりになられたそうです。
https://guccipost.co.jp/blog/gucci/?p=7233
私は、実はぐっちーさんのメルマガ(「ぐっちーさんの経済ZAP!! 」)の長年の愛読者でした。
いつから購読してたっけ、とさっき調べたら、2009年の6月からでした!
もう11年間にもなっていたんですね。
こんなに長期間有料メルマガを購読したのは、同氏のメルマガだけです。
アメリカで勤務経験があり、実際にアメリカに時々行かれて、
現地の景気を肌感覚で感じたうえで、経済指標の分析をなさるお方でしたから、
同氏の景気判断が、自分の感覚と大きくずれてきたら、
そのときはよく考えなければいけないと、
そんなことを常々思いながら拝読しておりました。
2009年当時、同氏に興味を抱いたきっかけは、
・リーマンショック発生前からサブプライムローンの問題化について指摘していた
・欧州経済の低迷が長引く、ということを、早くから読み切っていた
という紹介記事をどこかで見かけたから、だったと思います。
2009年当時は、前年のリーマンショックから、まだ経済が回復しきらない時期でした。
私は当時、証券アナリストの検定会員試験に趣味で合格してから2-3年目くらいで、
リーマンショック後のこの経済恐慌ぶりでは転職活動する気にもなれないし、
勤めを維持しながら、経済の波を読み切るスキルを身に着けたいけれども、
さてどうしたものか、と模索していた時期でした。
そんな矢先、2009年6月にAERA主催で同氏の講演会があることを知り、その講演会にまず参加して、
その後の懇親会で二言、三言くらい立ち話でたぶんお話をさせていただいたのではと思います。
そのあと、メルマガを購読し始めました。
それ以後は、講演会には参加していないのですが、いくつかメルマガでの
論旨で印象に残ったこと。
同氏の基本的な長期展望は、アメリカ経済については強気
日本経済の先行きについては弱気、という論調であったと理解しています。
人口動態からくる、20年、30年先の日米の今後の展望の違いについて、
かなり力を入れて説明をしておられた印象があります。
ここ1年、景気循環的にアメリカにリーマン級の経済ショックが来るという見方に対しては
非常に否定的で、2008年当時のような負債の爆発のような
兆候はまったくない、という論調でも一貫していました。
また、同氏は、円高肯定、円安否定のトーンが非常に強かったですね。
円安で伸びる輸出の経済効果など大したものではない、
通貨安は国の存立を脅かすもので危険なのだ、
通貨が高くて倒れた国はないが、通貨安が原因で倒れた国はごまんとある
自国通貨安を喜ぶなどどうかしている、というトーンも一貫していました。
これは、製造業についてあまり同氏は土地勘や思い入れがなさそうだから、
そのせいで円安をあまりよしとしないのかな、などと考えたこともあったのですが、
別な仮説として、ひょっとすると同氏には人口動態からみた日本経済の構造的な脆さが
普通の人以上に強く感じられていて、何年後何十年後かに、円通貨暴落の危機が起こる可能性を
密かに心配し続けていたためではないか、などと思ったりもしています。
ここは、いま文章を書いていて、また一度講演会に参加して、立ち話でそういう質問をしてみればよかったかな、
と思うのですが、その機会を失ってしまいました。
このほかにも、ふだんは東京にお住まいだったはずですが、
岩手県紫波町の経済復興にコンサルタントとして精力的に取り組まれていることは
メルマガでもいろいろ触れられていました。
最初の勤務歴が丸紅だったことが、こうしたコンピテンシーのベースにあったのでしょうか。
経済評論家がどうしても書斎派となりがちななかで、
起業や商売についても深くかかわりながら、いろいろな話題を書いてくださるお方でしたから、
毎週月曜のメルマガが読めなくなったのは本当に残念です。
最後のメルマガでは、同氏がウオッチされていた経済指標の参照先のリンク集が読者に配布されましたが、
これらのリンクを全部自分で調べていくよりも、やはり同氏のメルマガをずっと読んでいたかったなぁ。
おそらく、同氏としても59歳という若さでの急逝、さぞ不本意であったと思います。
謹んでご冥福をお祈りいたします。