トレードしていて一番怖いこと、気をつけていることは何か?
これまでこのブログでは淡々と、経済情勢などの分析を自分の頭の整理をかねて書いているのですが、たまにはもっと基本的なこと、自分が気をつけていることとか、関心のあること、教訓なども頭の整理をかねて書いてみようかと思います。
今回のお題 「トレードしていて一番怖いこと、気をつけていることは何か?」
答えは、「わからないことがたくさんありすぎるときに、ポジションをたくさんとってしまうこと」です。
僕が株式市場を継続的にみっちりと観察するようになったのは、実はせいぜいここ数年のことで、それ以前となると、各種口座は開設していたものの、相場を見たり見ていなかったり、どちらかというと、やっていない期間の方が長いのです。なので、相場を揺るがす大事件はもちろん記憶しているのですが、たいていの場合はただの傍観者でした。
21世紀の株式相場で歴史に残っている有名な事件といえば、
2000年4月の光通信の20営業日連続ストップ安
2001年の9.11
2006年1月のライブドアショック、さらに後日のライブドア3連続ストップ安
2011年の3.11東日本大震災に伴う株安。
などでしょう。
このへんはwikiの
株式市場の事件一覧
にまとめられています。
ちなみに、ライブドアショックの時は、自分は株をやっていません。
やっていたら大変だっただろうと思います。
この時、マザーズ指数は10%以上1日で下がったとされていますから。
特に、もしETFや先物などもあったとしたら、相当に被害を受けたでしょうね。幸い、当時はまだマザーズ指数のETFや先物はなかったんですが。
ただただ混乱の中を帰宅するしかなかった3.11発生直後
時々、思い返すのは2011年の3.11のことです。
当時、株は保有していなかったものの、今でもいろいろ考えることがあります。
当時の私は、日米でトレードできる口座があり、FX口座も持っており、いろいろやれる状況でしたが、まだ忠実なサラリーマンとしての日々を送っており、何もトレードはしていませんでした。
でもこのときに日経平均がどう動いたかは、ちらちらと仕事の合間に携帯で情報をみていたので比較的よく覚えています。14時46分に地震が発生しましたが、被害規模が不明なこともあり、日経平均は少し安かったものの地震直後はさほどパニックになりませんでした。
職場はといえば、やはりビルには被害もほとんどなく、「びっくりしたね」程度の雰囲気だったと思います。
1時間くらい経過してから、東北で大変な津波が起きているらしいというNHKの情報を職場の同僚がパソコンで見始めていて、また、いったん停止した首都圏の電車の大半がどうやら動きだしそうにないという見通しも報道され始めました。
そのときに私はどう帰宅しようかと不安になり、ふと、当時勤務していた会社のそばに自転車屋があったことを思い出しました。そこでこっそり職場から抜け出していってみると、とても高い特殊な型を除くと、すでに何台か買われてしまっていましたが、「まだ1台だけ店頭在庫がありますよ」といわれました!。店頭にあったその自転車は色も形もまったく好みではない、ふだんならこれっぽちも欲しくならない型でした。
最後の1台となると、もう考える余地はありません。コンビニのATMが動いていて現金を下ろせたので5万円ほど持参しており、その場ですぐ現金で買いました。最後の1台の自転車をこっそり買ったことは同僚にも言わず、職場から解放されると自転車屋に引き渡してもらい、自宅に向けこぎだしました。
人と車であふれかえる国道246の様子はいまでもおぼろげに記憶しています。あのとき車で帰宅していた人、特にバスに乗った人はしんどかったのではないでしょうか。歩いたほうがマシなくらいに動いていませんでしたから。
あまりにも人が多いので、並行する裏道に入ると、意外と人は少なくて、ふだんの様子とそう変わりありませんでした。
当時(今でも)、宮城には時々会って飲んだり遊んだりする友人がおり、携帯でメールを送りましたがなかなか返事がなく、返事がきたときに路上で激しく安堵したことも懐かしい思い出です。
自転車による帰宅は順調で、夜の9時か10時くらいに帰宅できたと思うのですが、家に帰ってからはじめて、津波の報道をちゃんと見ました。東北の方にはこんな感想で申し訳ないのですが「なんだこの海の様子は?ここは本当に日本なのか?」そんな感覚で映像を見ていたと思います。
そして、福島の東電で水蒸気爆発という事象が報道されたのが翌日土曜日だったはずです。牛乳やパンやごはんパックが売り切れになっているとか、そんな話題も出始めていました。
いつからか記憶がはっきりしませんが、計画停電が実施されるという報道も月曜までには出ていたと思います。
なので、パソコンやネット回線を使える状態が維持できるかどうかわからないのに、株を売り買いするというのは思いもよらないことでした。
自宅待機のまま、翌週月曜の3月14日を迎えました。寄り付きはそれほど下げずに始まっていて、「それほどひどくもないな」と感じた記憶があります。でも引けてみると株式市場は6%くらいは下げていました。
本当のパニックは15日火曜だったのではないでしょうか。この日は日経平均が一時前日比14%安まで下がり、引け値でも前日比10%以上のマイナスでした。
当時、私たちは本当のことを知らなかった
後日、仕事でつきあいのあった人から、「このとき突っ込み買いをして儲かったよ」という話を聞かされたことがありました。
へぇ、とは思いましたが、自分ならどうしたか、どうすべきだったか、については、あまりこの人に共感できていません。
仮に、月曜に、逆張りで買った場合どうなったか。これはかなりしんどかったと思うのです。自分なら火曜に投げてしまうでしょう。
火曜で買った場合も、値動きが激しいのに引けまで本当に持っていられたかどうか。あまり自信がありません。もちろん翌日に売れば利益がとれたことになりますが。
もっと慎重に考えないといけないことは、当時の状況です。
・余震がどのくらい強いものが来るのかわからない
・計画停電やネット回線の問題で、売り買いしたいときに決済できないかもしれない可能性がある
そしてもっと大事なことがあります。
・当時の日本の状況について「情報の非対称性」があった。東電の正確な情報を相場参加者も自分も知らされていなかった
のちに明らかになったところでは、3月11日中に炉心溶融が始まり、翌日土曜の12日にはメルトダウンが始まっていたことがわかっています。しかし、当時、福島原発でメルトダウンが起きているなどという情報はありませんでした。
東電がメルトダウンの可能性を認めたのは、2か月もたって5月中旬になってからです。
https://www.news-postseven.com/archives/20110520_20850.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/福島第一原子力発電所事故の経緯
つまり、3月16日から、株式が上昇したのは、はっきり言えば「メルトダウンを知らされないまま日本株が下げすぎと考えた参加者が多かった」からです。
当時のチャートでみると、テクニカル分析的に当然のような反発に見えますが、意味的には、危なっかしい期待論から見直し買いが入っただけといえます。
もし、福島原発の作業員が当たり前にスマホを所有し、SNSなどに書き込める状況が当時からあったとしたら?
もし、月曜か火曜にメルトダウンを起こしたという情報が流れていたら?
そして、チェルノブイリ級の事故らしいという予測が流れたとしたら?
いったいどこまで日経平均は下がったでしょうか。水曜に株を買う人はいたのでしょうか。
そう考えると、火曜日に買った人は賭けに勝ったと思いますが、僕にはそれほど魅力的な賭けには見えません。
知らないことは常にある。それが多いか少ないか判断すること
結局、株を売り買いする参加者は、どこまでいっても、物事のすべてを把握することはできません。
不完全情報の中で、判断を強いられています。この不自由さはAIが普及してもそうは変わらないでしょう。
だから、「わからないことが多すぎると感じたら、無理に売買はしない」、ということは、基本的な心構えの一つに置いています。
「でもさー、いうほど世の中、不透明ではないと思うよ。ネットでは本当の口コミ情報が流れる時代になってきているんだからさ」という人もいるかもしれません。
これは一理あります。
なぜなら、スマートフォンの普及率が2011年と2019年では大きく違うからです。
2011年当時のスマホの普及率を調べると、1割未満です。
しかし2019年は8〜9割になったと考えられます。
なので、もし福島原発のようなことがこれから起こったときには、現場の関係者がすかさずネット掲示板やSNSにメルトダウンの情報を書き込むのかもしれません。
しかし、それは別な問題をはらんでいます。
そうした口コミのリーク情報が、本当なのか、ただのデマなのか、私にはそのとき判断ができるのでしょうか。AIなら判断できるのでしょうか。
そのときになってみないと何ともいえませんが、判断がつかない情報として見過ごしてしまうなら、その情報は無いのと一緒。
ヘッジファンドの人工知能はトランプのアカウントのツィートを売買判断に使っているようですが、無名のアカウントのつぶやきや、掲示板の無名の書き込みについては、むしろ人間以上に関知しないのではないでしょうか。
こんな話を本で読んだことがあります。
(今もあるのですが)個別株ごとにホルダーが集う掲示板。2004年当時、ライブドア株の掲示板は、活気に満ちており、ホルダー同士がわいわいと先行き楽観的な話ばかりを書き込みあっていた。
ところがある日、その掲示板に、流れをぶった切るように、こんな書き込みがあった。
「明日、東京地検の捜査が入る」
一瞬、わいわいと騒いでいた掲示板の書き込みが止まった。
そして、次に掲示板に書き込まれたのは、ライブドアの先行き明るい事業展望についてのものだった。
すると安心したかのように、再び、なんの変わりもなくいつもの活況が戻った。
その翌日に、強制捜査が行われた。
読んだ瞬間「うーんこれは難しいなぁ」と思いました。
こんな状況に接して、私なら少なくともポジションは減らしますね、と言ってみたいところですが、残念ながら自信がありません。これですぐ反応してしまう人は、デマ情報に振り回されやすいという弊害もあるでしょう。
「ライブドアについて自分はどこまでわかっているのだろうか」と考え直すきっかけにはできて、そして迷ったり調べなおしたりしているうちに、ライブドアショックを食らってしまう、というのが自分にありそうな成り行きだったのかもしれません。
でも、わからないことが相対的に多い銘柄、ふだんから近寄りたくない銘柄はあります。
僕に言わせれば、バイオ株というのは、そういうカテゴリーの一つですね。
だからこそリターンが大きかったり、人気化したときの上昇が尋常じゃないという面はあるでしょう。
でも、これからも、あまり興味を持てそうもないカテゴリーの一つです。
とりすまして書いているようですが、今年はサンバイオショックのときはマザーズ先物でけっこうくらってしまいました。バイオ株がマザーズを大きく動かしているときは、先物やETFについても、気を付けようという教訓が今年は残りました。いろいろ考えてやるようにはしていますが、まだまだ失敗も多いのです。