部門別売買動向のデータの基礎知識と活用の基本

 

1・部門別売買動向の概要

 

 

日本取引所グループが、個人・外国人・金融機関など、投資家ごとの売買動向をまとめたものです。
毎週月曜〜金曜のデータの集計結果が、翌週木曜(間に祝日などあった場合は金曜以降にずれます)の夕方に発表されます。

 

集計される商品は

 

週次で集計発表されるもの:
個別株式、先物、転換社債型新株予約権付社債(CB)

 

月次で集計発表されるもの:
ETF、REIT

 

となっています。

 

発表元URL

 

株式や社債、ETF、REIT
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/index.html

 

 

先物
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-derivatives/sector/index.html

 

 

 

2・どこからデータを集計しているの?

 

「資本金の額が30億円以上」の総合取引参加者(証券会社)を対象に、

 

売買立会による売買
普通取引(当日・発行日決済取引・バイイン売買及び有価証券オプション取引の権利行使を除く。)
ToSTNeT取引
過誤訂正のための売買
立会外分売

を集計対象としています。

 

集計対象取引所は東証と名証となっています(2013年7月以前は大証含む)

 

 

3・集計対象や項目の内容は?

 

この項目は株式と先物に分けて解説します。

 

株式について

 

下記の市場区分別に集計されています

 

・東証一部
・東証二部
・マザーズ
・ジャスダック
・二市場(東京、名古屋)一・二部等 (東証マザーズ、東証JASDAQ、セントレックス含む)

 

また、部門については、

自己
海外投資家
個人
証券会社
その他法人等
その他金融機関
信託銀行
生保・損保
都銀・地銀等
事業法人
投資信託

となっています。

 

さら、株式のデータにおいては、

 

 

個人・自己:
現物取引と信用取引、

 

海外投資家:
個人と法人

 

 

の小計もあります。

 

 

 

先物について

 

一般的に225先物(ミニ・ラージ)とTOPIX先物(ミニ・ラージ)の数字が主に注目されますが、原票では下記のように多岐にわたります。

 

JPX日経400先物
NYダウ先物
TOPIXオプションコール
TOPIX先物
マザーズ指数先物
ミニTOPIX先物
国債先物オプションコール
国債先物オプションプット
長期国債先物
日経225mini
日経225オプションコール
日経225オプションプット
日経225先物
日経平均VI先物
有価証券オプションコール
有価証券オプションプット

 

 

部門については株式と同じです。

 

 

4・部門別売買動向の特徴・重要性とは

 

文字通り、部門別の売買動向がわかるということが特徴です。

 

特に、海外投資家は、相場水準を左右する存在として重要です。
なぜ海外投資家が重要なのかというと、個人や信託銀行は逆張り傾向が強くあまり相場水準を動かすような売買をしないのに対して、海外投資家は順張り傾向で上値を追い下値を叩くような売買をする傾向が強いからだと考えられています。

 

海外投資家の動向を知る手段は、この部門別売買動向のほか、財務省の「対外及び対内証券投資売買契約等の状況(指定報告機関ベース)」くらいしか、統計的な資料は存在しません。
(※主要証券会社の先物の取引高のみ取引参加者別取引高で毎日夕方公表されるので、これを援用することはできますが、はっきり取引主体が区別されたものは上記2つだけです)

 

 

なお、財務省の資料と日本取引所の集計結果の違いについては、取引所の解説によれば下記のようになっています。

 

 

@報告者の違い
財務省資料:
財務大臣から指定された指定報告機関
(銀行等、金融商品取引業者、保険会社、投資信託委託会社、資産運用会社)

 

東証資料:
資本金30億円以上の取引参加者(証券会社)

 

A報告範囲の違い
財務省資料:
・取引所取引及び取引所外取引(非上場銘柄に
 係る売買含む)
・株式以外にETF及びREITも合算

 

東証資料:
・取引所取引のみ(取引所外取引は対象外)
・株式、ETF、REITはそれぞれ別に集計

 

一般には、「対外及び対内証券投資売買契約等の状況」より「部門別売買動向」の方が、多くの取引所経由の売買を網羅していることや、株式および先物の動向がまとめてわかる点で有用性が高いと考えられているようです。

 

 

 

 

5・基本的な活用法は?

 

海外投資家が株式と先物の合計で買い越しているかどうかで、相場のトレンド判断の参考にすることができます。

 

たとえば、2018年は年初から「海外投資家」の売り越し傾向が続いていたため、いわゆる「10月買い、翌年4月売り」のアノマリーは無効だろうという判断を昨秋に下すことができました。

 

(参考)2014年以降の海外投資家の株式+先物の推移をグラフを掲載しているページ
https://investjpstock.com/cate_bumonbetsu/bumon_all_2019.html

 

さらに、当サイト管理人が調べた範囲では、先物よりも株式のほうが、相場動向への影響が大きいように思われますので、先物と株式の合計額だけでなく、株式の買い越し額も重視することを推奨します。先物の買い越し額が大きい場合は、短期的なトレンドで終わる可能性が高く、株式の買い越し額が大きい場合は、中長期的に前向きだと判断します。

 

 

このほか、自社株買いは「事業会社」の項目に含まれますので、自社株買いがどのくらいの規模であったのかも、当統計から知ることができます。
(※従業員持ち株の買いは、信託形式で信託銀行の手口として表れたりもしますので、事業会社の数字だけが自社株買いのすべてではありません)

 

年金基金の売買動向が表れるという点で、「信託銀行」の数字も注目されることが時々あるようです。

 

 

6・日銀のETF買いの影響は?

 

日本取引所グループにこの件を尋ねてもわからないといわれてしまいます。
しかし、日銀に問い合わせたところ答えてもらえました。

 

日銀のETF買いは、信託銀行に発注され(ここは取引所外取引だと思われます)、最終的には証券会社がETFを組成する動きにつながりますので、部門別売買動向においては「自己」の株式売買に表れるであろう、との見解でした。
実際に、過去の「自己」の買い越し額と、日銀のETF買い入れ額には確かに相関がありますから、間違いないと思われます。

 

なお、日銀のETF購入が「自己」に表れることについて、同様の見解を記載した大和総研のレポートがありますので、参考資料として紹介させていただきます
取引所外取引と日銀の ETF 購入   大和総研(2017/3/24)

 

 

このため、当サイトでは、日銀が毎日発表する数百憶規模のETF買い介入の有無については別途集計し、表の中で日銀のETF買いの数字を併記するとともに、「自己」から引き算して掲載しています。

 

※厳密にはこれ以外に12憶円規模の介入を日銀は毎日行っていますが、大きな影響はないとみて、あえてそれは含めていません。

 

 

7・先物のSQ清算は反映されるの?

 

当統計において、清算価格(SQ:特別清算指数)を用いた最終決済による先物ポジションの増減は反映されないというのが公式見解です。

 

ですが、そもそも最終決済で清算される先物ポジションがどのくらいの量か不明なため、この点をどう考慮すればいいかは、誰にもよくわからないのが実情です。

 

マスコミ等での証券会社関係者のプレゼンテーションを見る限り、この点は特に考慮されずに、単純に先物買い越し合計額をグラフ化しているケースばかりなので、それほどSQ決済は多くないという見解が大勢のようにも思われます。

 

 

8・先物の取引高の数字は証拠金ベースではないの?

 

証拠金ベースではなく、原資産ベースで記載されています。
たとえば、ある主体が当統計で「株式で100億円買い越し、先物で100億円売り越し」となっていた場合、単純加算して市場への影響はフラットとみなして問題ないということになります。

 

 

 

 

(このページのQ&Aは、思い出したりするにつれて随時加筆修正予定.)

 

 

本見解は、個人投資家として行った調査に基づいており、内容に正確を期しておりますが、実際の活用や売買においては、あくまでご自身の判断にて行われますようお願いいたします。

 

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