本当に儲けている投資主体はどこなのか?手口が巨大化した日銀によりマーケットはどう変質?


ふだんJPXの部門別売買動向をみて、海外投資家の動向をチェックしている方々は
アナリスト・投資家など多いと思います。

テレビやラジオでは、この部門別データが引用されながら、
「海外投資家がマーケットを荒らして儲けている」とか
「個人の方が実は健闘している」
とか、ついでに「解釈」が語られているのも
時々見聞します。

それらには本当に裏付けはあるのか?
正確な実態はわからずとも、ある程度の推測にも
部門別売買動向のデータを活用できるのではないか?

と考えてみました。

そこで、以下の仮定をおいて、
2018〜2020年、どの投資主体はどのくらい儲けたのか損したのか
推測を試みることとします。

今回の、推定のための算定方法です。かなりおおざっぱですが、
あくまで傾向をつかむためのものなので、アラはこの際、気にしません。

・使うのは、JPXから発表される部門別売買動向、当時のTOPIX価格データ

・株式、先物とも、すべてインデックス売買とみなす

・各週の月〜金の日足終値の平均値を売買価格とみなす

・先物売買はSQ清算されず年末までロールオーバーされ続けたと仮定する

・各年、ポジション0からスタートするとみなして、12月終値のTOPIX価格を基準に損益を算出

2018年は海外投資家の年


ではさっそく2018年から

各週の主体別の数字は、それぞれ、その週の売買が、年末にどういう損益をもたらしたかを示す数字で
計算式は (年末TOPIX ÷ 売買時TOPIX ) x 売買金額 - 売買金額 

上の式で何も難しいことはしていません。年末に評価額がどうなるかを推定し、そこから元の売買額を引くだけです。
表の数字をつぶさに追う必要はあまりないと思いますが、たとえば日銀は基本的に買いしかしませんので、
買った週のTOPIXよりも、年末のTOPIXが上がっていれば、その週の数字は必ずプラス(黒字)となります。

最終行がその年の損益合計です。


TOPIX
DATE
自己(日銀分除)
日銀
個人
海外投資家
信託銀行
証券会社
投資信託
事業法人
その他法人等
生保・損保
都銀・地銀等
その他金融機関
1871.5
1/5
213
-5
1459
-1386
-367
16
-60
54
-14
30
-8
6
1886.3
1/12
-1084
-316
-814
2109
-42
-10
201
-33
-16
29
77
13
1886.4
1/19
-229
-165
149
395
9
23
-224
-38
-7
30
76
2
1893.2
1/26
-218
-323
-528
1739
-88
-30
-329
-63
-54
13
12
-39
1861.6
2/2
-437
-301
-710
2346
-282
1
-501
-96
-17
-22
34
-16
1762.2
2/9
-141
-343
-997
2742
-296
-39
-551
-287
-68
42
25
-55
1718.5
2/16
-75
-102
-66
724
24
-3
-254
-177
-34
20
19
-36
1760.8
2/23
36
-231
-118
780
-213
2
-94
-92
-19
-25
22
-11
1756.0
3/2
-374
-337
-574
1403
99
-18
-41
-137
-25
5
36
-7
1707.4
3/9
-522
-99
-26
1042
-35
-10
-391
-79
36
3
97
-9
1742.8
3/16
-103
-218
62
488
45
-4
-74
-14
2
15
-116
-1
1706.5
3/23
324
-372
-660
323
46
-15
312
-20
-30
42
51
-4
1701.4
3/30
177
-186
242
1140
-640
-3
-748
62
-22
-8
-51
-12
1712.0
4/6
434
-189
66
-563
-69
4
184
-21
0
-10
91
13
1725.6
4/13
357
-8
350
-768
-7
0
24
-9
-10
16
11
1
1743.0
4/20
194
-9
357
-671
-41
-6
119
4
27
15
4
3
1767.0
4/27
122
-120
380
-465
40
11
-98
10
-31
10
97
20
1774.0
5/2
-93
-4
57
-157
59
1
218
-68
3
9
-25
2
1779.0
5/11
-138
-240
564
-363
121
8
-11
-33
0
24
37
9
1806.6
5/18
73
-10
694
-615
58
12
-50
-167
-32
43
-31
-4
1793.0
5/25
41
-370
-370
214
210
-27
458
-243
-11
5
105
-11
1752.6
6/1
-71
-327
-302
835
-103
-4
206
-217
-49
3
38
-21
1779.0
6/8
-81
-10
563
-363
-446
4
395
-90
-74
-11
139
-6
1790.0
6/15
477
-126
354
-905
197
-1
114
-50
-97
3
-6
-8
1752.0
6/22
-138
-423
-451
1265
-107
-13
-34
-71
-14
8
1
-3
1729.4
6/29
-21
-486
-226
945
-118
-1
-76
11
-40
13
-7
-13
1689.4
7/6
-21
-88
-39
341
-106
-11
55
-89
-79
-8
67
-22
1713.4
7/13
-38
-98
467
-363
80
30
67
-34
-33
-12
-55
-3
1747.3
7/20
62
-7
197
-918
7
-1
576
-26
56
13
17
14
1755.4
7/27
112
-9
289
-214
-51
-6
-147
-23
5
41
-64
23
1756.8
8/3
-85
-114
-179
543
-31
-8
-121
-64
-5
41
33
-0
1736.4
8/10
-14
-106
-226
214
-76
-3
319
-83
-34
-33
50
-0
1695.0
8/17
-119
-90
-286
825
-45
-4
-231
-80
9
-26
50
-9
1696.4
8/24
24
-7
263
-160
4
12
-6
-68
-21
4
-43
-1
1734.4
8/31
-114
-8
323
-750
141
-7
289
-17
-10
33
62
6
1703.6
9/7
-153
-353
-646
1302
17
-27
-59
-63
-13
14
30
-16
1702.8
9/14
-50
-94
457
-164
-241
24
90
4
-7
-6
-28
-12
1783.8
9/21
134
-8
1095
-2431
221
27
627
88
-60
22
93
29
1815.0
9/28
341
-133
592
-305
-868
42
-16
82
-36
78
130
21
1807.2
10/5
251
-132
-165
-762
290
-6
324
-1
-17
46
186
23
1731.8
10/12
-309
-392
-1123
2509
275
-49
-620
-65
-4
-0
-156
-1
1694.2
10/19
-294
-173
-250
1318
-51
-11
-535
-33
-4
-6
99
-18
1638.6
10/26
-19
-253
-365
1151
-55
-17
-357
-40
-19
2
-48
1
1627.2
11/2
-60
-120
227
379
-138
1
-259
-31
-1
1
14
-18
1660.8
11/9
105
-77
188
-384
209
-2
103
-108
-1
-5
32
9
1643.4
11/16
46
-133
-117
239
140
-9
10
-231
-8
7
59
-2
1627.0
11/22
-8
-176
28
418
-57
-1
-43
-135
-17
4
-29
10
1651.4
11/30
2
-6
369
-186
-107
10
-36
-97
-16
16
55
-3
1642.7
12/7
18
-196
-256
685
36
-16
-47
-150
-25
9
-59
-3
1595.9
12/14
-68
-138
12
389
30
-1
-140
-60
-29
20
4
-17
1543.6
12/21
-54
-70
-15
176
10
-4
-69
-8
-7
1
15
17
1460.7
12/28
2
33
-66
-30
47
-1
10
-1
10
3
-9
1
1494.1
損益合計
-1588
-8270
227
16056
-2261
-138
-1522
-3195
-959
560
1231
-161

なお、各週の売買手口はhttps://investjpstock.com/cate_bumonbetsu/entry268.htmlを参照してください

2018年は下落した年。海外投資家が先物を中心にショートして(売り越し額は13兆円!)
1兆6000億円もの巨額の利益を獲得しました。

一方で買いを入れ続けた日銀は8000億もの損失を出しました。信託銀行も2000億の損。
事業法人も含め、買い中心の主体にとっては受難の年です。

個人は、この年、トータルではわずかに売り越しです(2234億円売り越し)。
逆張りのリズムがまあまあかみ合っていた年で227億とわずかに黒字。
個人の場合、実際にはマザーズなどでの売買も大きいはずなので、
TOPIXの指数基準で損益を見るのは雑な推定といえますが、そこはご容赦。



2019年は日銀が巻き返し



続いて2019年です


TOPIX
DATE
自己(日銀分除)
日銀
個人
海外投資家
信託銀行
証券会社
投資信託
事業法人
その他法人等
生保・損保
都銀・地銀等
その他金融機関
1471.2
1/4
-42
122
67
-132
-47
-0
-37
37
3
2
-2
18
1523.6
1/11
16
99
-353
-236
142
-2
250
44
5
-12
60
6
1545.3
1/18
32
86
-180
108
50
2
-82
23
12
-4
-20
-7
1557.7
1/25
22
6
-77
212
-63
2
-60
-4
15
-15
-48
1
1559.1
2/1
-85
80
3
-3
-34
1
-5
56
16
-26
19
-2
1571.0
2/8
9
141
82
-61
-149
6
-133
118
8
-5
-23
2
1582.1
2/15
-98
66
-325
237
163
-13
-60
86
-0
-14
-15
-6
1608.9
2/22
-40
4
-216
313
23
-4
-86
83
-10
-25
-20
-4
1616.4
3/1
-2
4
-66
112
-12
-4
20
69
2
-30
-51
-7
1607.3
3/8
-53
154
194
-220
-194
7
-6
112
14
-12
-16
5
1594.0
3/15
10
61
-126
22
-5
-2
-42
123
-13
-0
-8
-2
1613.9
3/22
59
3
22
-41
-12
0
-43
17
10
-2
-4
4
1595.9
3/29
74
170
-10
-688
496
4
47
-44
5
-7
-28
2
1619.0
4/5
63
4
-433
507
-28
-10
-41
1
-0
-7
-9
-12
1611.7
4/12
-62
148
0
53
-66
-3
-54
7
7
-13
-13
-8
1623.4
4/19
-77
4
-167
481
-2
-5
-213
9
-4
-10
-0
-15
1618.4
4/26
37
49
-14
73
-83
-0
-74
22
20
-15
-4
-5
1568.1
5/10
-29
143
563
-831
-51
27
104
77
62
-6
-97
8
1542.4
5/17
-120
171
-63
-457
16
2
101
266
61
-41
70
9
1546.6
5/24
46
246
60
-553
-55
4
13
162
69
-8
14
4
1535.7
5/31
67
264
278
-722
-18
0
42
234
10
-41
-98
-11
1517.1
6/7
-119
198
-371
-90
100
-6
120
225
-10
-46
52
8
1551.3
6/14
67
84
-116
-209
15
-10
-38
171
14
8
-5
-1
1546.0
6/21
37
7
-88
-110
-10
2
-55
147
21
5
24
-7
1546.0
6/28
70
7
-10
-192
57
1
11
-9
55
-15
3
1
1587.3
7/5
-44
65
-306
221
12
-8
47
79
28
-7
-59
-13
1575.7
7/12
-4
136
102
109
-77
4
-444
102
33
-3
37
3
1558.6
7/19
-137
152
68
-90
-62
4
66
107
14
-0
-109
2
1569.9
7/26
-264
74
-158
323
-47
-9
-146
75
39
-3
84
-2
1562.0
8/2
35
150
425
-642
18
16
-107
93
17
-8
-16
3
1501.5
8/9
-8
319
350
-1732
36
24
680
283
11
17
12
4
1488.8
8/16
8
228
161
-684
-116
10
81
202
12
-6
71
11
1499.8
8/23
-135
113
-362
84
51
-6
27
160
27
11
10
-1
1492.0
8/30
-322
227
-95
15
-76
2
130
193
18
5
-56
-11
1518.9
9/6
2
8
-401
626
3
-4
-317
64
-12
8
50
-4
1579.5
9/13
38
5
-541
868
35
-19
-342
247
-225
-7
-43
14
1613.3
9/20
-4
2
-172
492
-83
-4
-203
17
3
3
-66
11
1617.6
9/27
-67
48
51
-412
267
0
115
-25
18
-2
6
1
1585.8
10/4
68
246
146
-339
-112
-3
-89
32
11
-16
29
-4
1583.5
10/11
-48
66
-189
105
37
-7
45
51
-0
0
-31
3
1624.5
10/18
-167
3
-205
727
-199
-8
-180
18
4
23
-7
-14
1639.7
10/25
72
2
-80
96
-20
-3
-76
21
10
-1
1
-5
1662.1
11/1
30
2
-116
167
-34
-5
-14
13
3
8
-31
-4
1697.4
11/8
-3
1
-45
82
-30
-1
-23
7
-0
4
6
-1
1699.0
11/15
-14
1
-16
81
-30
-1
-28
17
0
-3
3
-2
1693.9
11/22
-18
24
8
10
-26
-0
-3
22
1
-13
-4
-1
1705.4
11/29
-6
1
-21
34
-2
-1
-9
9
3
-5
-1
-1
1709.9
12/6
6
10
-7
-5
-2
-0
-6
7
2
-0
-2
0
1722.1
12/13
1
-0
2
-3
0
0
-0
-0
-0
0
0
0
1738.3
12/20
-9
-7
-5
-13
25
0
20
-7
-2
2
-3
1
1728.7
12/27
1
-0
7
-6
-1
0
-1
1
-2
1
2
-0
1726.8
12/30
-1
-0
-3
5
0
-0
2
-0
-0
0
-1
0
1721.4
損益合計
-1108
4194
-2749
-2309
-194
-18
-1095
3820
382
-335
-337
-32


2019年の各週の売買手口は、https://investjpstock.com/cate_bumonbetsu/bumon_all_2019.htmlを参照してください

2019年は上昇年であり、買い入れ中心の投資主体にとっては追い風の年。
日銀と事業法人(自社株買い)が成果を上げた一年でした。
日銀は4000億円の利益。

年を通して売り越しが多かった個人投資家は2700億の赤字。
逆張りのリズムがかみ合いませんでした。

海外投資家はこの年に2.4兆買い越したのですが、5月8月に大きく売り越したのが仇。
2000億の損に終わっています。
9月〜11月に積極的に上昇相場を先導したものの、そこに至るまでの
買いポジション作りが不十分だったためです。
9月〜11月の上昇は、それまでに突っ込み買いをしていた
日銀や事業法人に漁夫の利をもたらしたような格好となりました。


2020年も日銀が含み益トップ。リバ取りで協調した信託銀行も黒字


続いて2020年です。
記事執筆時点では〜5/22の週までデータが公表されており、
損益は5/29のTOPIX引け値によって計算しました。

TOPIX
DATE
自己(日銀分除)
日銀
個人
海外投資家
信託銀行
証券会社
投資信託
事業法人
その他法人等
生保・損保
都銀・地銀等
その他金融機関
1717.6
1/10
-539
-131
68
273
361
2
-98
-81
-4
-3
77
-7
1733.9
1/17
302
-74
-119
277
-356
-3
116
-89
-0
2
-48
26
1736.8
1/24
-51
-6
-219
208
28
-8
147
-81
-20
-6
22
-8
1690.8
1/31
43
-163
-278
589
60
-8
-75
-103
-16
-41
10
-0
1705.6
2/7
177
-63
374
-659
20
12
143
-82
5
11
38
-4
1713.6
2/14
-63
-66
-82
83
83
1
136
-97
-4
-12
6
14
1674.8
2/21
-48
-97
-97
189
201
-8
-43
-67
-3
-10
-5
-1
1575.8
2/28
-9
-22
-46
137
-9
-1
-26
-16
-4
2
2
-1
1504.1
3/6
24
82
196
-445
31
6
90
64
-4
12
-30
6
1354.1
3/13
487
630
243
-1499
-44
25
-181
245
-29
130
-17
-38
1264.7
3/19
166
770
371
-1830
801
20
77
156
12
-90
-256
-40
1381.7
3/27
2
536
-362
-806
822
-10
376
-29
-35
-125
-93
-28
1368.9
4/3
-544
636
72
-475
892
-8
-451
5
-49
-1
37
-64
1410.4
4/10
-148
268
-195
-453
375
-6
121
50
6
-11
65
-2
1427.7
4/17
123
235
10
-414
143
-3
-11
29
5
-3
-101
-7
1420.5
4/24
44
370
165
-530
-72
4
-89
47
25
33
-22
15
1447.9
5/1
-34
196
82
-171
-3
-2
-77
3
12
-33
26
-5
1442.5
5/8
42
2
-60
-113
13
0
118
5
2
-6
3
-7
1466.5
5/15
-83
204
151
-268
-50
5
-40
62
2
-17
17
-1
1481.8
5/22
-115
3
-60
213
0
-3
-66
16
3
5
20
0
1563.7
(5/29合計損益)
-224
3308
215
-5694
3296
13
167
37
-97
-163
-250
-152


各週の売買手口はhttps://investjpstock.com/cate_bumonbetsu/entry264.htmlを参照してください

ご存じのようにコロナショックで2月中旬〜3月中旬に大きな下落期がありましたが、
5月末時点で半値戻し以上のリバウンドをしています。
このリバウンドでのスタンスが、成績を分けています。

3月下旬の底値付近で大きく買いを入れたのは日銀と信託銀行。

日銀は19年までのETF買い予算6兆円を12兆円に倍増して
3月中旬から4000億/週もの相場介入を実行。
これによりリバウンドを先導し、5月末で3000億強の含み益。

信託銀行もこれに歩調を合わせて3月下旬〜4月中旬に積極的に買い越し。
ピークでは日銀を超える6000億/週もの買いを入れてリバウンドを先導。
やはり3000億強の含み益を得ています。

個人投資家も今年は買い姿勢が目立っているのですが、
日銀と信託銀行に比べると、下落相場で買いを最後まで
続けきれなかったのが残念でした。
2月下旬と3月上旬に早めに
6000億、5000億と買いを入れたものの
そのあと肝心のボトム近辺で1500億/週に買いが細ってしまったのです。
それでも5月下旬の相場上昇によって黒字に転換しました。

一方、海外投資家は今年はほぼ売り越し一辺倒。
1月のショートではまだ利益が出ていますが、
それ以降のショートは底値売りの形となり、相場底上げにより含み損が発生。
現状で5600億もの赤字となっており、日銀と信託銀行に完全に
してやられた格好となっています。

結局、上手下手というより、資金量の戦い


こうしてみると、さて、どの売買主体が、「巧い」のでしょうか?

正直いうと、僕の印象は、これは「上手下手の争いではない」、というものでした。
端的にいって、資金量の争いだと思います。

個人投資家は、基本的に逆張りですが
買うにせよ、売るにせよ、
長めの上昇、長めの下落が起こったときは、
資金が切れてしまって、逆張りに徹しきれない
脆さがあるようにみえます。
それが、今年の3月中旬、突っ込み買いが
細ってしまって、その後のリバウンドを
生かし切れていないデータによく表れています。
※上記のデータではそれでも個人は黒字なわけですが、
人数比でいえば、おそらく勝った個人は資金が豊富なごく少数でしょう。
少なからぬ個人は3月上旬までにナンピン資金が枯渇、
3月下旬に追証売りを迫られていたのではないでしょうか。
マザーズ銘柄を好む個人であればなおさらそうなっていた可能性は高い。

海外投資家については、2018年は
売買規模がそもそも圧倒的でした。
13兆円も年に売り切った結果、勝ちました。

2019年は、9〜11月の上昇を作ったのは海外投資家の資金ですが、
そこに至るまでに、買いポジションを仕込み切れなかったのが、
日銀に負けた敗因です。
特に5月8月の低迷期に売りに回ったのが仇で、
その月に資金量を生かして買いを入れ続けた日銀に有利な展開となってしまいました。


日銀は今年からETF購入予算12兆円を確保しています。
この12兆円というのは、2018年、海外投資家の売り越しで
話題になった額、13兆円とほぼ変わらない金額です。
日銀と信託銀行が足並みそろえれば、
もう海外投資家の売買資金も恐るるに足らずとなったということです。

2020年については、3月中旬のボトムで買いを入れられたかどうかが
決定打となっており、ETF購入予算を12兆円も確保した日銀が
資金量を生かしてまんまとナンピン買いを成功させた感があります。

資金量で日銀・信託銀の連合軍に負けている
海外投資家は今後は苦しい展開が続くでしょう。
ショートしても日銀に潰されてしまいます。
かといって買うべき下落場面では日銀ほど機械的に突っ込み買いができません。


相場の支配権を日銀が握ってしまった日本株市場は今後どうなるのか?


さて、個人投資家としては、もともと資金量が機関より乏しいのは、
当たり前の前提なので、その中で、どう立ち回るかを考えないと
この記事は完結しないのですが・・・・まだ考えがうまくまとまりません。

状況認識として、マーケットの性質がどうなるかを考えると、
下記のような成り行きが想定できると思います。

・先物インデックス売買で利益をとってきた海外投資家は
日銀という12兆円プレーヤーの出現により戦略見直しを迫られる。
先物売買に消極的になるか、あるいは、
日銀の介入を予測して先回り売買するなどより刹那的なAI売買に傾注せざるを得ないだろう。

・今後、どのような景気後退イベントが発生しても、
「とにかくナンピン買いを続ければ中央銀行がすぐに戻してくれる」という、
ある種のナンピン信仰のようなものが国内筋の機関・個人の間で浸透していく。

・PERやPBRなどの尺度を重視する意味自体が
薄れ、景気動向や企業業績といったファンダメンタル情報の
マーケットへの影響力が小さくなる。
また、経済情報の分析に自信のある投資家は、
株式よりも債券・為替の方が己の知見を
生かせると考えるようになる。

・2002年、2008年あるいは、2012年のような、
バーゲンプライス状態の出現を日銀が抑制してしまう結果、
テンバガーを探す長期スタイル投資家は、難解なテクノロジー企業や、
生まれたての新興銘柄にこれまで以上に傾注するようになるだろう。

ほかにも、まだ仮説はいろいろ考えられそうですが、また何か浮かんだら
追加します

<記・20年5月30日>
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